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サーゲー・ディヤングはリンダ・マンザ、ジュリアス・ボージャス、ジェフ・トラゴットなどの人気ルシアー達が口を揃えて「カナダの隠されたマスタールシアー」と絶賛する実力者である。また工房で年に3,4回ギター製作のコースも教えていてファブリッチオ・アルベリコ、ウィリー・カーター、アレスター・ミラーなど彼に師事して製作の道に入った若いルシアーも多い。
若い頃クラシックギターを習っていたサーゲーはギターの先生が所有していたジーン・ラリビーのクラシックギターに出会い感銘を受けた。その後大学生のときラリビーにコンサートで逢ったサーゲーは、ラリビーの所に弟子入りを願い出てすぐに大学をやめてギター製作の道に入った。ラリビーは当時ドイツのエドガー・ミンチからギターの製作を学び丁度1年ほど前に独立したばかりだった。サーゲーが入った当時はラリビーはクラシックギターのみを製作していたが、やがてスティールストリングスも作るようになり彼が辞める頃には丁度半々ぐらいの割合になっていたという。サーゲーが入ってしばらくしてグリット・ラスキンが入ってきたそうだ。つまり当時ジーン・ラリビー、サーゲー、グリットの3人のカナダのオールスターが一つ屋根の下でギターを製作していたというわけだ。サーゲーは1年半ほどラリビーで修行したあと今度は、ジュリアン・ブリームのギターを製作したことなどで有名だったクラシック・ギターの製作家パット・レスターの所で1年ほど修行した。「彼の製作へのアプローチはラリビーとまったく違っていたので、2つの異なった製作へのアプローチを経験することが出来てよい勉強になった。」と語っている。そして1年ほど放浪の旅をした後独立してクラシックギターの製作を始めたのだ。スティールストリングスは1975年ぐらいから製作し始めている。
クラシックギターの製作家としても一流のサーゲーは、スティールストリングスでもマーティンとは異なった独特のサウンドを作り上げている。サーゲーのスティールストリングスの特徴は中音域が太く透明感があり、単音での音の表現力やネックの安定感がまるで最高級のクラシックギターを弾いているような感じがすることだ。ボディーシェイプはStandardモデル、少し深めのOMモデル、小さな00モデル、Dモデル、SJモデルなどがあるが、どのモデルも非常に暖かく深みがあり弾きこむほどに味わいが出てくるサウンドだ。また彼は「ブラックブラジリアン」「スネークウッド」等入手が困難なプレミアグレードの材を使用し、その材の木目などの美しさを最大限に引き出すアーティスティックなデザインに仕上げている。機械などほとんど使わず、昔ながらの工法での製作を貫いているサーゲーは「トップに薄いパッチを貼ったりして工夫はしているけど、Xブレーシングでトラディショナルな作りだよ。ネックはダブテールだけどとてもタイトなもので糊を一切使わずにボルトで留めてあるんだ。他の人のデザインのコピーではなく自分が美しいと思ったデザインを貫いている。音だけでなく見ていて美しいということも大切だと考えているんだ。」と語っている。彼の素朴な人間性がギターにも良く現れている。最近はトーンと環境のことを考えスティールストリングスもフレンチポリッシュにし始めた。
彼の家族はギター製作ファミリーとしても有名である。
長女のヨシヤと彼女の夫のパトリックは既にルシアーとして独立して製作活動をしている。
Joshia de Jonge Guitars:http://www.joshiadejonge.com、Patrick Hodgins Guitars:http://patrickhodgins.com
長男のセイゲン、次男のルーベンも独立しギター制作とはまったく無縁の仕事を持ちながらも父親から受け継がれた一流のルシアーとしての技術を持っている。当店にもセイゲンの作ったギターに惚れ込み、制作の再開を待ち望んでいるファンもいるくらいだ。さらにいちばん下の息子のコリンがまだほんの子どもの頃、サーゲーのギター制作コースで大人の生徒相手にギター制作を教えていた光景はなんともユニークで微笑ましい。そんな彼の子ども達への技術の伝承は、子ども達の人生においてもしも何かあってもギターを作って食べていけるようにという親心あってのものなのではないかというのは考え過ぎかもしれないが、それにしてもなんともユニークなファミリーである。
彼は大の親日家で味噌汁、納豆、ワカメ、たくわんが大好き。制作に使用する鑿も日本製のものを愛用している。
日本への入荷は年間8〜10本程度。製作期間1年位でオーダーも可能。
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